霧幻峡と只見線撮影スポット
日本の原風景にタイムスリップしたような特別な体験
日本遺産に息づく、会津三十三観音の一堂
福島県南会津郡下郷町の湯野上温泉地区にある小野観音堂は、地元で「小野の観音さま」と呼ばれ親しまれてきた小さなお堂です。観音菩薩である十一面観世音菩薩を本尊とし、別名「大慈殿観音堂」とも呼ばれています。2016年に「会津の三十三観音めぐり〜巡礼を通して観た往時の会津の文化〜」を構成する文化財として日本遺産に認定されました。
江戸時代から会津地方に伝わる御蔵入三十三観音巡礼は、会津一帯に点在する観音霊場33箇所を巡る伝統的な巡礼です。小野観音堂は御蔵入三十三観音巡礼の第十番札所で、縁結びや安産の御利益があると伝えられています。
文化10年(1813年)、地元出身の僧侶である大雄得明和尚が周辺277ヶ村から寄進を募り、もとは小野岳の山頂に祀られていた観音像を現在の地に遷してこの堂を再建しました。彼の坐像は、堂内に安置されています。
その後も小野観音堂は地域の人々の厚い信仰を集めてきました。現在でも静かな森の中で手を合わせる参拝者の姿が多く見られます。

茅葺き屋根の駅舎で有名な湯野上温泉駅や、江戸時代の宿場町が残る大内宿などと合わせて訪れることのできる下郷町の穴場的な観光スポットです。
杉木立に囲まれた小野観音堂の境内は、街の喧騒から離れ静寂に包まれています。風で木々がそよぐ音や鳥のさえずり以外に聞こえるものはなく、まるで時間が止まってしまったかのような神秘的な空気さえ感じられます。
江戸時代当時の木造のお堂が良好な状態で保存されており、落ち着いた佇まいの中に歴史を感じることができるでしょう。小野観音堂は「唐様禅宗様円柱方三間寄棟造り」ーーつまり、屋根の頂上が一点に集中し、四方に向かって傾斜している安定感のある屋根に、横も奥行きも3間の正方形をした建物(方三間方形造)で、禅寺によく観られる禅宗様の建築様式で建てられています。この様式は、鎌倉時代以降、中国から伝来したスタイルです。
堂内には仏像を安置する須弥壇や十六羅漢の像が置かれ、再建に尽力した和尚の坐像も安置されています。 訪れる際は、ひんやりとした杉林の空気の中で静かに佇み、お堂に手を合わせてみてください。お参りにくる方もいらっしゃいますが、小野岳の登山口として利用する人も多くいらっしゃいます。人影が少ない静かな環境で心が洗われるようなひとときを過ごせるでしょう。
観音堂周辺は、春には境内を囲む山々の新緑がまぶしく、秋には紅葉で彩られます。散策路を歩いて四季折々に移ろう風景を楽しみましょう。苔むした石段と歴史ある木造建築が調和し、カメラ好きにもたまらないスポットとなっています。普段この観音堂は無人ですが、10年に一度だけご本尊の観音像を特別開帳する御開帳の行事があり、そのときばかりは多くの参拝客で賑わいます。
小野観音堂の本堂で手を合わせる様子
欄干には擬宝珠と呼ばれる玉ねぎ形の飾り金具が取り付けられ、正面には上部が火炎型・アーチ型になっている「花頭窓」という装飾窓が備わっています。
電車で訪れる場合は、会津鉄道で湯野上温泉駅で下車しましょう。茅葺き屋根の趣ある駅舎には無料の足湯が併設されているので、まずは旅の疲れを癒やしてから散策を始めるのもおすすめです。春には満開の桜を楽しめるスポットでもあります。駅から観音堂までは徒歩約21分です。
湯野上温泉郷と茅葺き屋根の古民家が立ち並ぶ風情ある宿場町・大内宿の間にそびえ立つ小野岳は温泉郷側と大内宿側の両方に登山口を持ちます。小野観音堂は湯野上温泉郷側に建ち、小野岳への表参道となっています。駅から観音堂に向かって森の中腹へ登っていくと、杉木立の中にひっそりと観音堂が現れます。車で訪れる場合は、観音堂近くまで舗装路が通じており、境内横の駐車場(5台分)を利用できます。 境内入口の石段には大スギがそびえ立ち、 荘厳な観音堂の左奥から登山道がはじまります。
登山がお好きなら、標高1383mの小野岳登山に合わせて小野観音堂を訪れるのも一案です。4月下旬から10月が登山におすすめの時期となっており、大内宿側から登るとブナやミズナラなどの豊かな自然を満喫でき、観音堂側から登ると温泉街を一望できます。山頂までは約2時間。頂上からは360度の眺望が広がり、新緑や紅葉の季節には特に素晴らしい絶景が望めます。
観音堂での参拝と散策を楽しんだ後は、ぜひ周辺の観光スポットにも足を延ばしてみてください。観音堂から車で10分ほどの場所に、江戸時代そのままの街並みが残る大内宿があります。茅葺き屋根の古民家が立ち並ぶ風情ある宿場町で、路線バスでもアクセス可能です。大内宿では長ネギを箸代わりに使って食べる名物の蕎麦を楽しみ、周辺を散策すれば江戸時代にタイムスリップしたかのような気持ちになるでしょう。2月上旬に開催される大内宿雪まつりでは、夜にかがり火や雪灯籠が灯り、幻想的な雪景色を楽しめます。
旅の締めくくりに、湯野上温泉の宿に宿泊して渓流沿いの露天風呂に浸かれば、心も体もポカポカに温まります。


営業時間:拝観自由(無休)
住所:福島県南会津郡下郷町湯野上字堂後甲386
・アクセス:
小野観音堂の入り口