美人林の概要
新潟県十日町市松之山の丘陵地に広がる「美人林(びじんばやし)」は、約3ヘクタールの敷地に樹齢100年ほどのブナの木が約3000本すらりと整列する幻想的な林です。大正末期に木炭生産のため一度伐採されたものの、翌年ブナが一斉に芽生え、ほぼ同じ高さ・太さで育ったことからその美しい立ち姿が「美人」と例えられました。

ブナは日本の落葉広葉樹を代表する樹種で、幹が白くまっすぐ伸びるのが特徴です。整然と並ぶブナ林は日本では珍しく、現在では年間約10万人が訪れる松之山観光のシンボルとなっています。一般的に、ブナは標高1000m以上に生育しますが、美人林はわずか標高約300m。この地域は豪雪地帯であり、その冬の気候が高地の寒冷な気候と類似しているためにブナが生育すると言われています。
美人林の足元は柔らかな落ち葉に覆われ、段差が少ないため散策しやすく、30分ほどで一周できます。林内には小さな池があり、特に夏には水面が“水鏡”となって木々を映し出す姿が見られ、カメラマンにも人気のスポットです。多くの野鳥が生息することでも知られ、静かな森を歩くとあちらこちらで鳥のさえずりが聞こえます。
近くには里山の生態系を紹介する科学館「森の学校キョロロ」があり、森の自然や文化を学ぶこともできます。
四季が織りなす美人林の風景

美人林は四季折々に異なる表情を見せます。早春には残雪の中から黄緑色の若葉が芽吹き、白と緑のコントラストが楽しめます。例年4月中旬頃から植物が芽吹き始め、4月下旬〜5月上旬に新緑の見頃となります。
夏は鮮やかな緑のブナが生い茂ります。美人林は周囲より気温が約2℃低いと言われるほど涼しく、木漏れ日に包まれたながら森林浴が楽しめます。
秋になると葉は黄色やオレンジ色に染まり、落ち葉がまるで絨毯のように広がります。紅葉の最盛期は11月上旬〜中旬で、落葉後もオレンジ色の葉が地面を覆う様子がとても美しいと評判です。

美人林周辺は、冬に2〜3メートルの雪が積もる豪雪地帯で、ブナの枝に雪が乗った“銀世界”が広がります。晴れた日には雪がキラキラと輝き、スノーシューを履いて白銀の森を散策するツアーも人気です。
旅の思い出を写真に残したいなら、撮影スポットとして池は外せません。特に無風の日は水面にブナが映り、上下対称の幻想的な風景が広がり、木々が水面でキラキラと輝きます。
春は芽吹き、夏は鮮やかな緑、秋は紅葉、冬は雪景色と季節ごとに違った表情が楽しめるため、訪れるたびに違う姿を見せてくれる美人林。木々をよく見ると、多くの木は幹の根元がJ字型に曲がった「根曲り」が見られます。これは、雪の重みで木が押し潰され、天然の曲木となったものです。
美人林の見どころ
看板
展示物
美人林内
楽しみ方・おすすめの過ごし方
観光の拠点となるのは北越急行ほくほく線「まつだい駅」。駅からタクシーで約15分の距離に美人林の入口があります。バスでの移動も可能ですが、冬季はバスが運休となります。
森の散策自体は予約不要で無料ですが、地元ガイドによる体験プログラムに参加するとより一層楽しむことができます。春から秋にかけては地元在住のガイド「里山のめぐみ案内人」が美人林を案内する「心美人ハイキング」があり、野鳥や植物を解説しながらゆっくり歩きます。美人林のみならず、野鳥の宝庫である須山の森にも足を伸ばします。何気ない林の風景の中に、新しい発見があるはずです。


冬は先述のスノーシュー体験が人気で、ガイドが同行して雪上の歩き方や見どころを教えてくれます。いずれも体験前々日まで予約サイトから予約できます。
天気の良い日は、電動アシストつきスポーツタイプバイク「里山E‑バイク」で周辺を巡るのもおすすめです。道の駅まつだいふるさと会館内の松代・松之山温泉観光案内所でレンタサイクルを行っており、坂の多いエリアでも楽に移動できます。レンタル料は4時間で2,000円、1日で3,000円(税込)で、4月下旬〜11月まで利用可能です。
美人林から車で10分の松之山温泉で宿泊や日帰り入浴を楽しんだり、地域一帯にアートが点在する「大地の芸術祭」の作品を巡ったりするのもおすすめです。さらに、森の近くにある十日町市立里山科学館「森の学校キョロロ」では、里山の生物多様性を紹介する展示のほか、昆虫採集や木工体験など季節ごとの体験プログラムが開催されています。


訪問の際は季節に応じて服装や装備を選びましょう。春は残雪が残ることがあるため防水の靴がおすすめです。夏は蚊やブヨがいるので虫除け対策を、秋は朝晩が冷え込むので羽織り物を持参してください。冬は積雪が深いため長靴やスノーブーツに加え、スノーシューをレンタルすると歩きやすくなります。
基本情報
スポット名:美人林
営業時間・定休日:通年開放・年中無休。夜間鑑賞は照明がないため不可。冬季は積雪のため一部区間が閉鎖されます。
料金:入場無料
※ガイドツアーやレンタサイクルは別途料金が必要です
駐車場:普通車約30台。冬期間は除雪されないため「森の学校キョロロ」駐車場を利用してください。
見頃:新緑は5月上旬、紅葉は11月上旬〜中旬、雪景色は12月〜4月。
トイレ:林内にはトイレがありますが、夜間は利用できません。
近隣施設:近隣に無人販売所があり、5月〜11月頃は地元野菜や山菜を販売しています(木曜定休)
アクセス
住所:〒942-1411 新潟県十日町市松之山松口1225−1
交通アクセス
- 車:関越自動車道「越後川口IC」または「塩沢石打IC」から国道353号線経由で約50〜60分。 ※冬季はR353坂下入口から入る際に冬用タイヤが必要で、堺松入口側は通行止めとなります。
- 電車:上越新幹線「越後湯沢駅」から北越急行ほくほく線で「まつだい駅」下車、タクシーで約15分。
- バス:東頸バス松之山温泉行きに乗車し「堺松バス停」下車後徒歩約20分(冬季運休)
- その他:北越急行ほくほく線「まつだい駅」から「里山E‑Bike」をレンタルしサイクリングで訪れることもできます。
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