世界中のスキーヤーやスノーボーダーを惹きつけてやまない、日本のパウダースノー「JAPOW(ジャパウ)」
きめ細かく軽やかな雪質と、シーズンを通して安定して降り続く豊富な雪。こうした日本の雪の特徴から、「JAPAN」と「POWDER」を組み合わせた JAPOW という言葉が生まれました。この言葉、ご存知でしたか?
まるで波に乗っているかのような浮遊感。ターンのたびに舞い上がる粉雪。
その雪質の良さは世界でもトップレベルと称されており、一度体験すると、多くの人がこの雪を求めて日本へ向かう理由が自然と理解できるはずです。
近年、こうした雪を目当てに日本を訪れる外国人旅行者は増え、ニセコや白馬といったスキーリゾートは冬になると世界中から集まった人々で大きな賑わいを見せています。
その一方で、JAPOWを楽しめるエリアとして、まだ広く知られていない場所も存在します。そのひとつが今回ご紹介する福島県・会津エリアです。
その立地・気候から恵まれた雪が充分に降り積もる会津ですが、有名リゾートのような喧騒はなく、穏やかな空気の中JAPOWを楽しむことができます。
日本らしい空気を感じながら、目の前の自然の恵みを存分に楽しむー…
そんな落ち着いたスノートリップを求める人にとって、会津は理想的な場所です。
そして、JAPOWのように日常と切り離された時間を味わう旅は、スノーリゾートだけで完結するものではありません。その先にある空間や滞在の質まで含めてこそ、旅の体験はより深く、記憶に残るものへと変わっていきます。
それらの繋がりをより豊かなものにするために、今回は移動手段として、チャーターでハイヤーを利用することにしました。

郡山駅からハイヤーで移動
今回の旅の目的は、スノーリゾートと冬の温泉旅館。
終始雪景色と共にあるスノートリップでは、交通手段選びがその滞在のクオリティを左右すると言っても過言ではありません。
そのため今回利用することにしたのが会津交通のハイグレードタクシーです。
会津交通のハイグレードタクシーは、通常のタクシーと違い事前予約によって手配でき、旅やビジネスシーンでの移動の質をワンランクアップしてくれる交通手段です。チャーターによる貸切のほか、時間単位での利用も可能で、送迎時のみにお願いすることもできます。
決まったルートやダイヤで移動する公共交通機関と違い、旅程に合わせての時間指定ができることが魅力のひとつでもありますが今回の旅でハイヤーに心強さを感じたのは、雪道の運転です。

スキー場→宿間が移動のメインとなる今回の旅では、その移動時間の多くが雪の峠道となり、自身の運転によるレンタカーでの移動には不安を感じていました。
しかしハイヤーの利用では、自身の運転スキルや慣れない土地での移動に不安を抱く必要はありません。
会津交通のドライバーさんは会津の気候・土地柄を熟知した地元の人ばかり。観光案内ではないため多くは語らない車内ですが、その確かな後ろ姿に安心感を覚えます。

初心者からパーク好きまで楽しめる、会津の秘境南郷スキー場
郡山を出てハイヤーは会津の奥へ、奥へと進み
まず1日目に訪れたのが、南会津に位置する会津高原・南郷スキー場です。

南郷スキー場はスキー場自らが「秘境」と名乗ってしまうほどの奥地にあり、
正直なところ、公共交通機関だけで訪れるのは現実的とは言えません。
ここはまさに「知る人ぞ知る」根強いファンも多いローカルスキー場です。
こんなややマニアックとも言えるスキー場を選択することができたのもハイヤー利用ならでは。ここまで辿り着けたものだけが楽しめる景色とは何か、また、そこまでして辿り着きたい理由とは…
会津に降り積もるパウダースノー
その前に少し、会津の雪がどれほど恵まれているかをお話ししましょう。
日本の中でも内陸に位置する会津は、質の高い雪に恵まれたエリアです。
日本海から運ばれてきた湿った空気は、山々を越えて会津に入る過程で冷やされ、水分を落としながら雪へと変わります。その結果、雪に含まれる水分量が少なく、軽く乾いた雪が降り積もります。これこそが、会津の雪がJAPOWとして高いポテンシャルを持つ理由のひとつです。
また、会津では一度に大量の雪が降るというよりも、シーズンを通して安定して雪が降り続く傾向があります。そのため、雪のコンディションが大きく崩れにくく、訪れるたびに良質な雪を楽しめるのも、会津ならではの魅力と言えるでしょう。
器具やウェアをレンタル
普段スキーをしない私は、滑走器具をレンタルしました。レンタルの受付は、センターハウス内にあり、スキー場内の施設でその全てを完結することができます。
また、ウエアに関しても大小さまざまな大きさが用意されているため、身長や足のサイズなどを伝え適したアイテムを受け取り、スキーの用意を整えます。

初心者にも安心のゲレンデ
最初はまず、リフトに乗るところから緊張するのがスキー場。
しかし私たちの訪れを見てリフトマンのスタッフの方がボタンに手をかけました。
慣れていない様子を感じ取り、リフトを少し減速するためでした。
そのため私たちのような初心者でも、安心してリフトに乗ることができました。
そうした心配りに、会津のひとのあたたかさを感じ、少しずつ緊張がほどけます。

南郷スキー場の中腹に着くと、今リフトで登ってきた景色を眺めることができます。
滑ることを目的とすることが多いスノースポーツですが、私はこのスキー場から眺める雪景色も好きです。
穏やかな山々に抱かれた里の懐かしい景色。華美な景色ではないものの、自然と山間部の人の営みの豊かさを感じます。

あとはゆっくりと、しかし着実に久しぶりのスキーを楽しみます。
南郷スキー場は広々とした斜面をもつ上に、秘境ゆえ、大きな混雑はほとんどありません。そのため周りの人の存在を気にせず滑ることができてしまうほどの余裕があるため、初心者の方や、家族連れでも安心して雪上での時間を過ごすことができます。

玄人が楽しむ秘境
今回は慣れない私たちの挑戦であったため、初心者向けゲレンデとして最適であることにフィーチャーしてしまいがちでしたが、南郷スキー場はパーク好きやパウダー好きなど、スキー・スノーボードの楽しみ方をより深く知る人たちにもうってつけのゲレンデです。
造成の上手さが際立つパークでは、大小のキッカーやジブアイテムが楽しめるほか、日本でもトップレベルにオープンの早いハーフパイプが根強いファンが多い理由のひとつです。
そのいずれも美しく整えられており「せっかくきたなら、気持ちよく、おもいきり楽しんでいって欲しい」そんなまごころが垣間見えるような気がします。
また、パウダー好きにはたまらない非圧雪エリアも点在し、降雪の翌日にはJAPOWを求めるスノー客が多く訪れます。
とはいえここは南会津の奥地の秘境。熾烈なパウダー争いはなく、静かに、穏やかにそれぞれがパウダーを楽しむ、そんな空気感も特徴的です。
意外と本格派なゲレンデ食堂
ランチタイムはセンターハウスでいただきます。
今回私がいただいたのはガパオライスで、まずはそのボリュームに驚きます。
「たくさん滑ってお腹が減ったけど、足りなかったらどうしようー…」そんな心配はご無用、お皿いっぱいに盛られたガパオライスが私を迎え入れてくれました。それにしても、スキー場でガパオライスとは珍しい。

ひとくち食べてびっくり、こんなに美味しいご飯がスキー場でたべられるなんて!
バランスを考えて盛られたのか、千切りのキャベツがこんもり。
それと上に乗せられた卵はとろりととろける絶妙な半熟具合。
それらを合わせてスプーンに取り、口に入れるとなんとあとを引く刺激なのでしょう。
「これ、何のスパイスが使われているんだろう…」
まさかスキー場でスパイスに思考を巡らせることになるとは思いませんでした。
ピリッと少し辛いあと味なので、辛いものが苦手な方には要注意。
私は辛いものが大好きなので、このガパオライスがとても気に入りました。

南郷スキー場で食べられるランチメニューの多くは溢れんばかりの大盛りで、お味も本格派。スキー場のランチと侮ることなかれ。訪れた際には様々なメニューを試してみてくださいね。
ちなみに、限定で少し変わったメニューが現れたりもしている様子…
そういった工夫や、訪れた方に楽しんでもらいたいという心が随所に感じられます。
ここで働くスタッフは、ほとんどが地元の方で、夏季はトマト農家を営む人が多いのだそうです。夏は農家、冬はスキー場。地元の方々が一年を通してこの地を守っていこうとする、心意気の表れなのかもしれません。
なぜ私たちは会津の奥地まで足を運んだのか。
その答えは、この一日を通して自然と伝わったのではないでしょうか。
軽く質の高い雪、混雑のないゲレンデ、初心者から玄人までを受け止める懐の深さ。
南郷スキー場には、派手さはないけれど、確かに「ここまで来る理由」がありました。わざわざ辿り着いた人だけが出会える風景と空気。
その価値を静かに実感した、ローカルスキー場での一日でした。
日本文化が静かに息づく、渓谷の温泉宿
スキーの心地よい疲労感を余韻として抱えながら、
ハイヤーに乗り込み向かった先は、芦ノ牧温泉に佇むお宿「大川荘」。

大川荘は、いわゆる「疲れを癒すための宿」という言葉だけでは語りきれない存在です。
渓谷の淵に建つ印象的な佇まいと、奥行きのある空間が連なる館内構成は
足を踏み入れた瞬間から、意識を日常から静かに切り離していきます。

立体的に交差する空間の中心には浮舞台が設えられ、三味線の音色が空間を満たす。
その先には、雪に包まれた渓谷の景色。
雪景色、建築、温泉、そして文化的な演出がひとつにつながり、
視覚や聴覚を通して、立体的な体験として私たちを包み込みます。
大川荘を象徴する「浮舞台」
三味線の音色に導かれるようにロビーを進むと、
この宿の象徴とも言える浮舞台が現れます。
三味線の演奏は、毎日16:00〜18:00の2時間。

しとやかな着物に身を包んだ女性が、静かに舞台に佇む。
そこから放たれるひとつひとつの音。
指先にまで意識が行き届いたしなやかな所作に、
日本文化が持つ静かな美しさが凝縮されているように感じられます。

指先の動き、間の取り方、音の余韻。
そのすべてが、この宿に流れる時間の速度を変えていきます。
特別な客室へ
フロントでチェックインを済ませたあとは、
大川荘の中でもたったひとつの特別な客室へ。

大川を望む角部屋の一室。
この部屋のVIPたる所以はそれだけではありません。
この客室に備えられているのは、プライベートサウナと源泉かけ流しの温泉。
すべてを客室内で完結できるプライベートな空間です。
しかし大川荘は源泉かけ流し棚田風湯船の絶景露天風呂も自慢なのだそう。
明日も滞在するので、客室の楽しみはとっておきにして今日はそちらへ向かうとする。
渓谷美に癒される絶景温泉
段々畑を模した、絶景露天風呂「四季舞台棚田」
その名の通り、四季折々に表情を変える渓谷美を間近に感じながら、
湯に身を委ねることができる露天風呂です。
芦ノ牧の自然に包まれ、風の音や空気の冷たさ、
湯気の立ちのぼりまでを五感で味わいながら過ごすひととき。
自然と一体になるような時間が流れます。

豊富に湧き出す温泉は、源泉かけ流し。
男性用・女性用ともに三つの湯船が設えられ、それぞれに新しい湯が注がれています。
湯守りによって丁寧に温度管理がされているため、どの湯船も心地よい状態で楽しむことができます。

やわらかな肌あたりの泉質は、長く浸かっていても疲れにくく、
冷えた身体を芯から温めながら、張りつめていた筋肉をゆっくりとほどいていきます。
段々状になっているため、下の湯船ほど温度が下がっていくのかと思いきや
上の湯船から溢れたお湯が下段に流れ込まないよう、山側へと流れる構造になっているのだそう。
それほどまでに豊富に湧き出す温泉に身を委ねる時間は、
実に贅沢で、穏やかなものでした。

雪質と地形を味わう、ネコママウンテン
2日目の今日も会津の雪を存分に楽しむべく、雪山へと向かいます。
ハイヤーの迎えを頼み、向かうのは磐梯山の麓。
旧アルツ磐梯スキー場と猫魔スキー場がひとつになり、
スケールアップしたネコママウンテンにやってきました。
特別に軽い、ネコマのJAPOW
ネコママウンテンのパウダースノーは、とにかく軽く、乾いているのが特徴。
なかでも、標高が高く、日当たりの少ない北エリア(旧・ネコマスキー場側)では、冷えた空気が安定して保たれています。
そのため、降り積もった雪は湿りにくく、時間が経っても空気をたっぷり含んだ状態を保ちます。ターンのたびにふわりと舞い上がる粉雪は、ネコマのJAPOWらしさをはっきりと感じさせてくれます。
地形のうねりを素直になぞりながら、粉雪を舞い上げていく感覚。
ネコママウンテンは、雪そのものを味わう楽しさを、存分に教えてくれる場所です。
パークが支持される理由
ネコママウンテンを語るうえで欠かせないのが、パークの完成度。
キッカーやジブアイテムの配置、サイズ感のバリエーションは、初めてパークに挑戦する人から、しっかり遊びたい上級者までそれぞれが自分のレベルに合った楽しみ方を見つけられる構成になっているのが特徴です。
「パークを滑りに行く山」として、目的を持って訪れる人が多いのも納得。
雪質の良さがベースにあるからこそ、着地やスピード感にも安心感があり、
パークでの一本一本が、自然と気持ちよくつながっていきます。
受け皿の広い、リゾートスキー場
近年、猫魔スキー場とアルツ磐梯スキー場が一体化し、現在のネコママウンテンへと生まれ変わり、現在は 星野リゾートが運営を担っています。
これにより、山の南面と北面、両エリアを共通リフト券で滑走できるようになり、
ゲレンデ全体のスケール感と自由度が大きく向上しました。
朝はパウダースノーを楽しみ、その後はパークやカービング、家族連れならキッズパークへ。一日を通して、さまざまな滑り方を受け止めてくれる山へと進化しています。
連泊で過ごす、大川荘
滑り終えたあとは、ふたたび大川荘へ。
すでにチェックインも荷物の心配もない。
ただ、やすらぐために再び月見亭へと向かいます。
大川荘は、館内の規模も大きく、趣の異なる複数の温泉をはじめ、酒バーやボードゲーム、カラオケなど、滞在中に楽しめるエンタメも豊富。
外に出なくても、時間の使い方はいくらでも選べます。
この何も急がなくていい感覚こそ、連泊ならではの贅沢です。

初日は大浴場で旅の疲れをほどきましたが、
この日は客室に身を委ね、静かな時間をゆったりと楽しむことに。
月見亭で過ごす夜
私たちが宿泊しているのは月見亭VIPツイン
プライベート温泉とサウナ付きの、会津和モダンタイプのお部屋です。
今夜はこちらでプライベートな時間を過ごします。

好きなタイミングで好きなだけ“ととのう”ことができるプライベートサウナは
身体を芯から温め、雪山での疲れをじわり、じわりとほどいていきます。
落ち着いた色合いの白河石と桧で設えられた空間は、源泉かけ流しの温泉。
硫酸塩泉のなめらかな泉質は「美人の湯」とも言われており、
桧の香りに包まれながら、身体と心が自然と深い安らぎへと導かれていきます。

湯上がりに迎えてくれるのが、客室内にしつらえられた茶室です。

会津は、武家文化が今も息づく土地です。
茶の湯は、華やかさを競うものではなく、心を整え、所作と向き合うための文化として受け継がれてきました。この客室に設えられた茶室も、そうした会津の文化を感じられる空間です。
湯上がりにお茶を点てるひとときは、
雪山で高まった感覚を静かに整え、滞在の余韻を深めてくれます。
プライベートなサウナと温泉、そして茶室。
窓越しに渓谷を望みながら過ごす時間は、ただ泊まるだけの宿泊ではなく、
旅の余韻を身体の奥へと落とし込むための、静かな締めくくりでした。
会津の素材を味わう、丹精込めた特選会席料理に舌鼓
夕食は会津の素材をふんだんに使用した会席料理宿をいただきます。

その日に仕入れた旬の食材を使い、一品ずつ丁寧に仕立てられた特選会席。
採れたての地元食材ならではの瑞々しさと力強い味わいに、改めて会津という土地の豊かさを感じます。
会場となるのは、本格和風会席「美味求真 KAWADOKO」。
襖で仕切られた個室と、ほどよく開けた半個室が用意されており、今回は個室でゆっくりと食事を楽しみました。

木の温もりに包まれた落ち着いた空間は、外の時間を忘れさせてくれるよう。
目の前の料理と会話にだけ意識が向く贅沢な時間です。
福島県産和牛サーロインを箸で掬うとその重量感に驚きます。
鉄板に乗せるとジュウッ…と耳に心地よい音が響く。
口に入れるととろけるような柔らかいお肉からはさらりとした上質な油が溶け出します。

このお肉や野菜は、お好みでバターを敷いて焼くのですが
バターを吸った会津産車麩は危険な美味しさ。
カリッと焼かれた表面は香ばしく、
そしてじゅわりと溢れるバター。
焼き物だけでも満足してしまいそうですが、
目にも美しい品々が私たちの目の前を埋め尽くします。
鍋物にはカニの爪や海老芋、舞茸。
旬のお造りに蒸し物には蓮根豚角万頭。
贅を尽くされたお料理の数々は、
「日常を忘れて、ここでしか味わえないものを」という心が込められているそう。
そしてお肉や海鮮で美味しい油をただいたあとに
運ばれてきたのは、会津蕎麦。

「お早めにお召し上がりください」とのことで
打ち立ての蕎麦をいただくと、さらり。
さっぱりと、しかし豊かな蕎麦の香りが口の中を吹き抜け
爽やかな余韻をもたらします。

誰にも急かされることなく、料理と向き合う時間は
雪山で過ごした一日の締めくくりにふさわしいひとときでした。
料理そのものはもちろん、空間ごと味わう。
この日の夕食は、会津の夜を静かに深めてくれる時間だったように思います。
一日の始まりを整える、大川荘の朝ごはん
朝食はブッフェスタイル。
朝食会場からも渓谷を眺めることができ、
朝のさわやかな川の流れを感じながら、1日をスタートさせることができます。

食材の吟味を重ね、手作りにこだわったお料理の品々。
中でもオススメは大川荘オリジナルの卵かけご飯。
お米は会津産コシヒカリ、卵は会津地鶏の卵を使用し
ふわふわのメレンゲ状にした白身を炙り、黄身と海苔をトッピング。
メレンゲに出汁が含まれているため醤油なしでいただくこともでき、
味変に醤油をかけていただくのもおすすめの食べ方だそう。

ふんわりとした口当たりと、濃厚な黄身の風味。
そこにお出汁の優しい味わいと海苔と炙りの香ばしさも加わり、
やわらかく目覚めさせてくれるような、そんな一品です。

余談になりますが、大川荘はとても規模の大きな宿です。
これだけの規模になると、どこか無機質な印象になってしまいそうですが
実際はまったくそんなことはありませんでした。
館内では、スタッフの方々がさりげなく私たちの様子に目を配ってくださり、
分からないことがあれば、いつも丁寧に案内してくれます。
決して出過ぎることはなく、それでいて放っておかれることもない。その絶妙な距離感が、とても心地よく感じられました。
こうした気配りの積み重ねこそが、日本が誇る「おもてなし」の文化なのだと思います。
大川荘での滞在は、豪華さや規模の大きさ以上に、人の温度がしっかりと伝わってくる時間でした。
また、フリースペースには、小さなお子様のミルク用として常温の水やお湯が用意されているのも印象的です。
子育てを経験された女将さんだからこそ気づける視点なのだろうと感じました。
大きな宿でありながら、あらゆる世帯に寄り添うまごころが、館内のさまざまな場面にさりげなく散りばめられています。
旅の余韻と共に

再びハイヤーの迎えを呼び、大川荘をあとにします。
まだ名残惜しい気持ちをぐっとこらえ、この余韻をハイヤーの中で噛み締めようと思います。
女将さんたちは、私たちが見えなくなるまでその身の向きを変えながら
手を振って見送ってくださりました。
その光景が、なぜだかとても胸に残ります。
豪華な設備や美しい景色だけではなく、
ここには確かに、人のあたたかさが息づいていました。
旅の最後に心に残ったのは、
「また来たい」と思わせてくれる、その静かな優しさだったのかもしれません。
