こんにちは。私は現在、台湾に住む大学生です。日本各地をめぐる旅を通じて、人と土地、そしてその土地に根ざす暮らしの姿にふれることを楽しみにしています。

ガラス張りのロビーで筑後川を眺めた瞬間、肩の力がすっと抜けました。
福岡県朝倉市・原鶴温泉の「原鶴の舞」は、客室に温泉が引かれ、食事は個室で“おこもり”を徹底。さらに段差が少なくスロープも整っていて、誰でも安心して静かに過ごせる設計でした。
派手な演出で驚かせるというより、細部の気遣いで「ちゃんと休める」方向に連れていってくれる宿。
「休むために泊まる」なら、ここがいちばんしっくりくる。その魅力を、これからお伝えします。
原鶴の舞
詳細を見る【宿の魅力】筑後川を一望する“ガラスのロビー”|おこもり宿でも息ができる

履き心地のいいスリッパに履き替えて館内へ入ると、まず目に入るのが吹き抜けの天井。そこにガラス張りのロビーが続き、第一印象から開放感があります。
そして目の前には筑後川。眺めがとにかく抜群で、思わず立ち止まってしまいました。大きなガラス窓から陽の光が差し込み、空間全体があたたかい。広いのに落ち着く、不思議と居心地のいい場所です。
“おこもり”を意識されている宿だと聞いていましたが、閉じこもる感じはありませんでした。景色がちゃんと近くにあって、呼吸がしやすい。そんなロビーでした。
【チェックイン】濃厚芋羊羹×抹茶|到着5分でリラックス

チェックインでは、ウェルカムスイーツの芋羊羹をいただきました。濃厚なのに口当たりがよく、するっと入っていきます。
宿の方が点ててくださった抹茶は深みがあって、これがまた美味しい。移動の疲れもあって、気づけばぺろっと完食していました。
最初の一杯と一口で、肩の力が抜ける感じ。ここからもう、休みモードに入りました。
【お部屋】三世代設計の特別室|露天&内風呂、ワインセラーのあるくつろぎ空間

お部屋に入ると、昼下がりのやわらかな光と、茶香炉のいい香りに包まれます。あたたかい雰囲気で、どこかほっこり。これから泊まる私たちを迎え入れてくれるような空気がありました。
足元の畳も印象的で、触りが気持ちいい。素足で歩くだけで「落ち着くな」と素直に思える感じです。

今回宿泊するのは、露天風呂&内風呂付きの特別室。このお部屋は大人数でも楽しんでもらえるような構造になっていて、全体的に広々とした印象でした。友達グループでくるもよし、家族旅行でくるもよし。様々なタイプの旅行スタイルにマッチし、大勢で楽しく過ごせます。二人で泊まるにはちょっぴり贅沢ですが、その“余白”がうれしい。
さらにワインセラーには木でできたグラスと赤ワインが用意されていて、チェックイン早々、もうリラックスできます。

原鶴温泉が“ダブル美肌の湯”と呼ばれるのは、弱アルカリ性単純温泉と単純硫黄泉、2つの泉質を味わえるから。
片方だけでも魅力的なのに、両方あると思うと、つい何度も入りたくなる——そんな特別感のある温泉です。お湯はやわらかく、湯上がりはしっとりします。
弱アルカリ性単純温泉は、皮膚表面の古い角質を落としやすくして、肌をしっとりすべすべに保つ。さらに保湿効果の高い重曹成分も含まれており、整った肌をやさしく守ってくれるとのこと。
一方で単純硫黄泉は、古い角質を落とし、余分な皮脂を取り除くとされ、シミの原因になるメラニンも落とすといわれているそうです。硫黄成分は日に当たると皮膚に薄い膜をつくり、紫外線から肌を守ってくれるとのこと。
夜と朝、今回の滞在では2回温泉に浸かりました。お部屋に付いているので、好きなタイミングで入れる——この点はやっぱり大きなメリットです。泉質も「美肌」と聞くと欲が出てしまって、すべすべ肌になりたくて、つい長く浸かってしまいました。
そして夜は、寝心地のいいベッドでしっかり深い睡眠が取れました。旅館というと敷布団のイメージがありますが、敷布団に抵抗がある方や慣れていない外国の方でも、ここなら安心して過ごせると思います。
【夕食】和洋折衷の創作和食|蟹味噌コロッケ・茶蕎麦・石焼和牛、旬のいちごで締め

夕食は、想像以上にしっかり満腹になる量でした。以前はさらに多くのメニューがあったそうですが、今でも十分です。
蟹味噌クリームコロッケや茶蕎麦、お刺身、和牛の石焼など、いろいろな種類の料理を少しずつ味わえるのが楽しい。女性でもちょうど食べ切れる量感でした。

今回は佐賀牛でしたが、お肉屋さんの仕入れによっては鹿児島牛や宮崎牛になることもあるそうです。
そして最後に、女将さんに作っていただいたのどくろの混ぜご飯。塩味の加減がちょうどよくて、本当に絶品でした。
デザートはいま旬のいちご。重たさを残さず、すっと終われる晩餐でした。
【朝食】“体にやさしい”がちゃんと美味しい|藁納豆の食感、朝からごはんが進む

朝食は、何より豪華。まず並んだ瞬間にテンションが上がります。
藁納豆には大麦も入っていて、食感も味も新鮮でした。体にやさしい和食で、内側から起きていく感じがします。
卵かけご飯に鰹節をふんだんにかけて食べるのも、これがまた絶品。
量は決して多すぎず、ちょうどいい。こういうところにも、気遣いが見えていました。
【まとめ】断らないサービスと改善力|泉質・食事・接客が選ばれる理由

宿の方にお話を伺って、まず腑に落ちたのは「原鶴温泉そのもの」の魅力でした。原鶴温泉は“美肌の湯”として知られ、各旅館が源泉を掘っている温泉地だそうです。温泉を目当てに訪れるお客さんが多い、という話も納得でした。
さらに、うきは・朝倉は地元の野菜やフルーツが有名で、地産地消を目指して仕入れをしているとのこと。道の駅から地元の食材を取り入れていると聞くと、夕食や朝食で感じた「素材の新鮮さ」が、より言葉としてつながりました。
宿としては、各部屋に温泉を引き、“おこもりの宿”としてリニューアルしたのが大きな軸。お食事会場を個室にすることで、他のお客さんと顔を合わせないようにしている点も、その考え方に沿っています。同じ価格帯のお部屋でもコンセプトを変えている、という話からも、「滞在の時間そのものを整える」意識が伝わってきました。筑後川を望むリバービューは、その静けさにちょうどいい抜け感をつくってくれます。
そして個人的に安心感につながったのがバリアフリーの工夫です。各部屋の入り口にスロープを設置し、館内も段差を少なくして車椅子でも移動できるようにしているとのこと。旅先での“ちょっとした不安”を、最初から減らしてくれる設計だと感じました。
食事については、料理長やオーナーが試食したものを提供し、食材は大量仕入れをせず新鮮なものを使うという方針。名物は和洋折衷で創作の和食で、味だけでなく目でも楽しめるようにしているそうです。実際、品数は豊富なのに食べ疲れせず、最後まできれいに終われたのはこの“組み立て”のおかげだと思います。
サービス面で心に残ったのは「基本的にお断りはしない」という姿勢です。気遣いを強く意識し、体の不自由な方への配慮も心がけているとのこと。小さな旅館だからこそ、お帰りの際にアンケートで声をもらい、改善を重ねていく——その“改善力”が強みだと言っていました。
スリッパも、土踏まずが気持ちいいものを用意して「特別な体験」にしているそうです。茶香炉も、香りでお出迎えするサービスの一環。温泉組合で河川敷の清掃を行っているという話まで含めて、この場所を大切にしている空気が、宿のあちこちににじんでいました。
静かに過ごしたい人に向き合いながら、細部の気遣いでちゃんと満たしてくれる。原鶴の舞は、そんな宿でした。