霧幻峡と只見線撮影スポット
日本の原風景にタイムスリップしたような特別な体験
福島県下郷町の観音沼森林公園は、南会津地方の豊かな森と湖沼が織りなす自然公園です。公園の中心にある観音沼は、約1万7千年前に甲子旭岳の噴火によって生じた溶岩が長い年月をかけて侵食されてできたとされています。標高は約900メートルと高地にあるため、周囲の山並みを望むことができます。また野鳥の宝庫としても知られており、鳥のさえずりに耳を傾ける贅沢な時間を過ごすことができます。
昭和60年(1985年)に森林公園として整備された観音沼周辺は、以前は秘境と呼ばれるほどアクセスが困難でしたが、2008年に国道289号線(甲子道路)が開通したことで白河方面から南会津へ通じる観光ルートとなり、紅葉の名所として一躍人気スポットになりました。
沼の周囲には浮島が点在し、水面には春夏秋冬の景色が映り込みます。湖畔には平安時代の武将・坂上田村麻呂が東征の際に戦没者を弔うため建立したと伝えられる嶽観音堂が建ち、唐様式の宝形造りの堂内には流麗な彫刻が施されています。公園名の「観音」はこのお堂に由来しています。

観音沼森林公園は、四季折々の草花や野鳥の観察が楽しめる自然観察の宝庫です。春は公園内に植えられたシダレザクラやヤエザクラが咲き、湖畔に氷河期の生き残りといわれる水生植物・ミツガシワが可憐な白い花を咲かせます。また、シャクナゲやミズバショウなども咲き誇ります。
初夏には緑豊かな新緑が沼を囲み、湿原ではワタスゲやノハナショウブが風に揺れます。野鳥のさえずりが公園全体に響き、バードウォッチングを目的に来園される方も多いのだとか。標高が高いので、比較的涼しい気候の中を散策できます。
秋の紅葉は特に有名で、モミジやナナカマドが赤や黄に染まり、沼の水面に鏡のように鮮やかに映り込みます。紅葉は10月中旬から11月前半が見頃で、朝霧に包まれた時間帯には幻想的な光景が広がります。
公園内には展望ポイントや芝生の広場が整備されており、ベンチで休みながら紅葉狩りを楽しめます。遊歩道を落ち葉が多い、まるで赤い絨毯の上を歩いているかのような、この季節だけの贅沢な体験もできますよ。
冬には雪が積もった静寂の中、雪深い森をスノーシューを履いて散策する「かんじきウォーク」が開催されています。この頃には観音沼が凍っている様子も見ることができます。
公園の周囲に広がる総延長約3.2kmにも及ぶ9つの遊歩道は、訪れる季節や目的に合わせて選べるのが魅力です。湖畔を一周するコースは約1.2kmでアップダウンが少なく、家族連れや高齢者も無理なく散策できます。
観音沼森林公園を訪れる際は、半日ほどかけてゆっくりと自然を楽しむプランがおすすめです。駐車場から公園入口まで徒歩3分ほどで、湖畔を一周するコースは1時間ほどで回れます。紅葉シーズンは混雑し駐車場が早朝から満車になることがあるので、早めの到着がおすすめです。
まずは9つの散策コースの中から、自分に合ったコースを選びましょう。湖の周りを30分ほどかけて一周したり、園内全体を1時間かけてぐるりと一周したりと、体力やスケジュールに合わせて調整しましょう。9つ全てのコースをめぐるには、1時間半程度の時間がかかります。野鳥の声に耳を傾けながら、浮島や湖面に映る景色を楽しみましょう。
湖畔を回り終えたら、少し足を伸ばして「見晴台」や「展望台」へ。「見晴台」からは沼を見下ろすことができ、「展望台」からは背後山々を一望でき、紅葉や雪景色が広がる絶景スポットです。西岸にある嶽観音堂は外観の見学が可能で、唐様式の彫刻や佇まいから日本の宗教建築の美しさを感じ取れます。歴史好きの方は坂上田村麻呂にまつわる逸話を調べてから訪れると、より一層深く楽しめるでしょう。
時間に余裕があれば、公園近くの観光スポットにも足を延ばしてみてください。国道289号線沿いにある道の駅「しもごう」では、手打ちそばや会津地鶏丼など地元グルメを味わえ、木工品や特産物の買い物も楽しめます。
車で15〜30分圏内には、自然が作り出した奇岩群「塔のへつり」や茅葺き屋根の古民家が並ぶ「大内宿」など、南会津地域ならではの観光名所が点在しているので、観光スポットをめぐる旅程を立てるとより充実した旅になります。
営業時間:9:00〜16:30(年中無休)
料金:入園無料
住所:下郷町大字南倉沢字観音平
・アクセス: