【福岡県うきは市】いそのさわ滞在記|創業132年の酒蔵に泊まる。酒蔵見学×古民家ステイ 日本酒が一気に近くなる

こんにちは。私は現在、台湾に住む大学生です。日本各地をめぐる旅を通じて、人と土地、そしてその土地に根ざす暮らしの姿にふれることを楽しみにしています。

今回滞在した「いそのさわ」は、宿に泊まるというより、酒蔵の敷地の空気に一晩浸かるような場所でした。敷地内にはいくつもの建物が並び、日本酒の酒蔵から焼酎の酒蔵まである。そのスケールの中で酒蔵見学をすると、洗米の秒単位の管理、発酵タンクの迫力、現場の緊張感が一気に目の前に現れて——日本酒が急に“身近”になります。

さらに泊まる場所は築132年の母屋。古民家の不安よりも、こたつと暖房の安心感が勝つ夜でした。酒タンクを再利用した水風呂とサウナまであって、体験が多すぎる。帰る頃には、土産話が自然に増えている滞在でした。

いそのさわ

いそのさわ

詳細を見る
河上ラリーサ

株式会社 Hinotori

河上ラリーサ

河上ラリーサ
こんにちは。私は現在台湾に住む大学生です。日本各地をめぐる旅を通じて、人と土地、そしてその土地に根ざす暮らしの姿にふれることを楽しみにしています。

【いそのさわの魅力】蔵の敷地で一日一組|酒タンク水風呂×サウナで整う

いそのさわの魅力は、「酒蔵」と「滞在」が分かれていないところだと思います。創業132年。母屋も同じく132年の歴史があり、いま、うきはの蔵はここだけだそうです。

この蔵を四年半前に譲り受けたのが中川さんです。創業家とは血縁関係はなく、継ぐことになったきっかけは「何度も頼まれたから」。うきは唯一の蔵を、しぶしぶ請け負った——その正直な言葉が、むしろこの場所のリアルさを強くしました。

引き継いだ当初は出だしがマイナスで、まずは知名度を上げて“知ってもらう”ところから始めたそうです。とはいえ、肝心の酒は元々本当に美味しかった。だからこそ必要だったのは、味を作り直すことではなく、どう広げていくか。そこが要になった、という話が印象に残っています。

そのうえで、製造スタッフの不満や改善点にも寄り添って耳を傾けながら、少しずつ製造方針も変えていったそうです。地元と一緒にこの蔵を育てていく——そんな意志が、言葉の端々から伝わってきました。

そして、その美味しさを支えているのが、うきはの水。硬水よりの軟水で、飲むとまろやかで美味しいそうです。井戸を掘って使っていて、1時間に20トンの水が湧き出ているそうです。

宿は最大9人定員、1日1組限定。プライバシーを重視していて、サウナを楽しむもよし、お酒を楽しむもよし。お酒を楽しみに来られる方が多いからこそ、お部屋にもたくさん用意しているとのことでした。夕食はイタリアンをいただきたい方にはご用意し、または地元のお店を紹介するなど、ニーズに合わせて対応しているそうです。

酒蔵見学希望の場合も基本的には断らない(お盆やお正月を除いて)とのこと。日本文化に興味のあるインバウンドや日本酒好きの方も増えていて、酒蔵に興味のある方が好奇心を持って来られることが多いそうです。

そして個人的に刺さったのが、酒タンクの再利用。余っていた酒タンクを水風呂にしていて、タンクの内部は錆びないよう綺麗にしてあり、排水も綺麗になっているそうです。ユーモアがあるのに、サステナビリティも感じる。ここにしかない要素だと思いました。
「酒を作る工程とサウナがリンクして、帰りにはお客がお酒になるようなイメージ」という言葉も、最初は面白い比喩なのに、滞在すると妙に腑に落ちます。

【酒蔵】敷地の広さに圧倒|洗米の緊張、酒造りのかっこよさ

敷地に入ってまず感じたのは、広さと建物の多さです。日本酒の酒蔵から焼酎の酒蔵まであって、歩いているだけで「ここは本当に“作っている場所”なんだ」と実感します。水は井戸を掘って湧き水を使用しているそうで、酒の味の核が、ちゃんとこの場にあるのが強い。

敷地内で一番歴史のある木造の酒蔵には、20トンの酒を製造可能な機械がありました。この古さの機械は福岡県内ではここぐらいだという話で、見られたこと自体が少し誇らしい気分になります。ただ、昔ながらの機械なため温度調整ができず、一般的な小瓶の日本酒製造のみという制限もあるそうです。古い=すごい、で終わらず、現実としての条件も含めて“蔵”なんだなと思いました。

皆さんは、純米酒と純米大吟醸の違いを知っていますか?
私は日本酒が好きなのに、正直なところ「純米」「大吟醸」という言葉はよく見かけるだけで、違いを意識したことがありませんでした。

でも話を聞いて腑に落ちたのは、その差が“雰囲気”じゃなくて、手間とお米の違いだということ。発酵のムラを避けるために毎日状態を見ながら手を入れ、混ぜる作業ひとつにも気が抜けない。しかもタンクが大きいほど混ぜたときのムラが出やすいので、大量製造は純米酒のようなスタイルに向いている。一方で純米大吟醸は、ムラを抑えるためにできるだけ小さなタンクで仕込むぶん、どうしても手間がかかり、その分だけ付加価値も上がる——。

話を聞きながら、値段の理由がちゃんと“現場の重さ”として入ってきました。

大きなタンクだと、3トンの米と米麹、4トンの水を入れ、20日以上発酵させて絞る。昔は手で混ぜていたけれど今は機械で行う。大きなタンクを上から覗いたとき、正直ゾクッとしました。深さというより、そこに時間と発酵の気配が詰まっている感じがして。

米の話も印象的です。純米大吟醸として使うお米は磨いて、六割は糠として取っているため小さな粒になる。そして良いお酒はこの時期(1月下旬)につくる。寒い時期は雑菌が少ないから——この理由がすごくシンプルで、だからこそ説得力がありました。

洗米の見学では、さらに空気が引き締まりました。まず水の温度調整など準備の様子。水流で一分洗って一分掛水。ここでの時間管理は重要で、少し緊張した空気が現場に流れていました。余分な水分を除去し、一晩寝かせる。寝かせることによってお米が水を吸えるような状態にする。その後蒸す。ここまでの行程は日本酒も麹作りも同じだそうです。
従業員の方の真剣な姿に見惚れてしまい、酒造りの“かっこいい一面”を、真正面から見せてもらった気がしました。

【お部屋】築132年の母屋に泊まる|隙間風の心配より、暖かさが勝つ

母屋二階へ上がると、今回泊まる宿の空間が広がります。肌寒い季節にはありがたいこたつが目に入り、まずほっと安心しました。

築132年と聞くと、やはり隙間風や寒さへの懸念が出るのが正直なところ。でも暖房設備はばっちりで、ヒーターも各箇所に置かれていて、暖かく過ごせました。床下の防寒対策から冷暖房設備まで、寒さそして暑さへの対策はきちんと整えているそうです。照明なども工夫しつつ、趣や雰囲気を変えないように意識しているという話にも納得で、清潔さと古さのバランスがちょうどいい。

さらに嬉しかったのが、日本酒がオールインクルーシブで楽しめること。夜のくつろぎ時間に一杯…が自然にできて、「泊まる楽しみ」がちゃんと増えます。しかも、ここうきはは水道水が天然水だそうで、水がすっとおいしい。何気なく飲むお水まで気持ちよくて、体が整っていく感じがありました。

お布団もふかふかで、心地よい夜を過ごしました。

シャワー設備は外で、こちらも酒タンクを再利用されていて新鮮。すぐ横にはサウナがあるので、外気を感じつつも体の芯から温まる。冬はより気持ちよく感じます。

【ランチ】古民家×本格イタリアン|スモーク香るバーガーと泡にごり

ランチは CASA CUOMO CAFE UKIHA ISONOSAWA で、マルゲリータピザとスモークチーズバーガーをいただきました。バーガーは木の箱に入っていて、開けるとスモークのいい香りがふわっと漂う。動画映え抜群で、思わず撮りたくなります。

イタリア人の方がやっている本格イタリアンレストランで味も抜群。イタリアンと築132年の古民家コラボの空間は良いバランスが取れていて、写真映えします。

お供に「うきは 泡にごりスパークリング」もいただきました。日本酒でありながら、どこかスパークリングワインを思わせるような味と見た目。日本酒×本格イタリアンのコラボはここならではで、特別な体験になりました。

レストランについて聞いた話も面白くて、ピザ職人のサルバトーレクオモさんに声をかけたところ、建物や日本酒に興味を持っていただき「ぜひやりたい」という流れになったそうです。お酒やうきはの食材を使った料理を中心に出していて、ピッツァとハンバーガーがおすすめ——まさにその通りでした。

【朝食】朝からイタリアンで幸せ|焼きたてピザとカプレーゼ

朝食もランチと同じく CASA CUOMO CAFE UKIHA ISONOSAWA で、ピザとサラダセットをいただきました。焼きたてのピザはもちもち生地で、朝でも食べやすい口触りと味でした。

モッツァレラとチェリートマトのカプレーゼサラダはおしゃれで絶品。お供にあまおう苺のジュースをいただいたのですが、果肉が入っていてフレッシュ。朝から本格イタリアンをいただけるのは、ここぐらいでしょう。イタリアン好きの私には最高の特別時間で、しっかり満喫しました。

【まとめ】うきはの未来と蔵開き|地域に開く場所として

チェックアウト時に枡酒をいただき、檜のいい香りを堪能しました。最後まで “蔵の滞在”として終わる感じがあって、すごく好きでした。

この場所は、体験が多い。酒蔵見学で現場の緊張感に触れて、古民家であたたかく眠れて、サウナで芯から温まる。食事も敷地内で完結できて、日本酒とイタリアンの組み合わせまでここで成立してしまう。ここに泊まると、土産話がたくさん持ち帰れると感じました。

そして、うきは地域からの期待の話も印象に残っています。蔵開きには一万人ほど来られるそうで、ここならではの形で地域へ貢献していくという言葉にも現実味がありました。
私は何より、酒蔵の迫力と、酒造りの現場の“かっこよさ”が忘れられません。いそのさわは、日本酒が好きな人だけじゃなく、酒蔵に興味がある人の好奇心まで、まっすぐ受け止めてくれる場所だと思います。