福島県・会津若松市の南に位置する芦ノ牧温泉。その深い渓谷の淵に、創業70年以上の歴史を刻む宿「不動館」はあります。昭和30年代に湯治場として始まり、50年以上前に現在の姿となったこの宿は、加水・加温・循環を一切行わない「100%源泉かけ流し」の湯と、すべての客室から望める渓谷美が自慢です。
周辺の旅館が廃業していく厳しい状況の中でも、「この宿を残していきたい」という強い信念を持って宿を支え続けるベテランスタッフの方に、不動館のこだわりと、お客様に寄り添うおもてなしの心を伺いました。

鶴我東山総本山 支配人・物江 潤さん
創業70年、石積みの下から湧き出る「本物の源泉」を求めて

ーーまず、不動館の温泉のこだわりについて教えてください。
スタッフ: うちの一番の自慢は、なんといってもお風呂ですね。男性風呂も女性風呂も、そして露天風呂もすべて、一切循環させていない「源泉かけ流し」なんです。源泉は石積みの下の河原のへり、約300メートル下から掘り出していて、58度の単純泉をそのまま湯船に注いでいます。

ーー薬剤消毒や加水をしていない天然の源泉そのままであると伺いました。
スタッフ: はい。自然のままの良さを味わっていただくため、消毒もしていません。夏場は45度近くなって「熱すぎる」とお叱りを受けることもあるのですが、冬場は雪見風呂として最高ですよ。特に女性の露天風呂は、目隠しがありつつも檜の香りが楽しめる贅沢な造りになっています。
全室が「渓谷の特等席」。四季が織りなす絶景の魅力

ーー客室からの景色も、この宿の大きな魅力ですね。
スタッフ: そうなんです。「全室から渓谷が見える」こと。これが不動館の最大の強みです。特に紅葉の時期は、目の前が真っ黄色に染まって本当に見事ですよ。冬には、ロビーから雪が下から舞い上がるような幻想的な景色が見られることもあります。
ーー館内にはお子様向けの施設も充実しているそうですね。
スタッフ: 建物自体は古いのですが、清潔感には何より力を入れています。お子さん連れの方にも気兼ねなく過ごしていただきたくて、ベビー用品を揃えたり、県からの補助金でロビーに遊び場を作ったりもしました。ミニ卓球台もあって、夜にはご家族で楽しまれる姿もよく見かけます。
地酒と郷土の味、そして心に寄り添う「おもてなし」

ーーお食事についても、大切にされていることを教えてください。
スタッフ: 高級食材は使えませんが、国産の肉を使い、調理長が春夏秋冬に合わせたメニューと器で季節感を出すようにしています。お客様には特に馬刺しが人気ですね。合わせる地酒も、南会津の「走り」や会津若松の「会津娘」など、私自身が本当においしいと思うものをお勧めしています。

ーーお客様とのエピソードで、心に残っていることはありますか?
スタッフ: 以前、お誕生日の客様に、事前の連絡をいただいて手作りのコーヒーゼリーをサプライズでお出ししたんです。そうしたら本当に喜んでくださって。特別な設備はなくても、心のこもった「おもてなし」こそが大事なんだと、改めて実感した瞬間でした。
芦ノ牧温泉の灯を絶やさず、「のんびりできる宿」を次世代へ

ーーこの宿を24年間続けてこられた、その想いを聞かせてください。
スタッフ: 正直、必死ですよ(笑)。人手不足もありますし、周りの宿が次々と閉まっていく。でも、ここを訪れて「喜んで帰ってもらいたい」という一心で続けています。人との会話が好きなんですよね。それが私の原動力かもしれません。
ーーこれからの不動館、そして芦ノ牧温泉をどう見据えていますか。
スタッフ: 芦ノ牧温泉はまだ知名度が低いですが、ここは本当に「のんびりできる」場所です。将来的には、お子様連れを歓迎しつつも、**「大人がのんびりできる宿」**としての質をさらに高めていきたい。地

窓を開ければ、そこには悠久の時を刻む渓谷の音と、湯煙の香りが漂っています。決して豪華ではありませんが、不動館には「守り続けたい」と願う人々の温かな体温が宿っていました。四季折々の絶景に包まれ、混じりけのない源泉に身を委ねるひとときは、日々の喧騒を忘れさせてくれる至福の休日となるでしょう。
鶴我 東山総本山
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