インタビュー

【静岡・用宗】一棟貸しの古民家宿「日本色」が生む、地域と共生する宿泊体験

静岡駅からわずか2駅、約7分。昔ながらの風景と漁港、そしてビーチがコンパクトに詰まった港町・用宗(もちむね)。この地に点在する古民家を改修し、一棟貸しの宿として生まれ変わらせたのが「日本色(にほんいろ)」です。

今回は、何もない港町だった用宗を舞台に、宿づくりから始まった街の活性化に取り組むCSAの小山田隼さんに、宿誕生の経緯や古民家ならではの魅力、そして地域と共生する街づくりへの思いをじっくりと伺いました。

大﨑 庸平

株式会社 Hinotori 代表取締役

大﨑 庸平

地域観光と地域旅館が好きで株式会社Hinotoriを起業しました。以前は株式日本ユニストにて熊野古道の宿「SEN.RETREAT」を立ちあげ集客していました。「地域のまごころが報われる世界を創る」をミッションに旅館と地域観光を盛り上げたいと思っています。以前は屋内型テーマパークSMALL WORLDSやアートアクアリウム美術館の立ち上げに参画してマーケティングをしたりとマーケティング畑が長いです。新卒ではPwCコンサルティングに所属しておりました。

http://hinotori-trip.com/media

日本色 支配人 小山田隼さん(右)、大﨑(左)

静岡県用宗に佇む、港町の一棟貸し。

何もない港町・用宗のポテンシャルに惚れ込んで

ーーまず、用宗という地域の特徴と、そこに「日本色」を開業したきっかけを教えてください。

小山田さん: 用宗は元々、昔ながらの風景が残る小さな港町です。漁港やビーチなど、いろんな素材がコンパクトにギュッと詰まっているのが最大の特徴ですね。

きっかけは、弊社の社長が約5年前に用宗に移住したことでした。実際に住んでみて、「静岡駅からたった2駅というアクセスの良さがありながら、全く観光地化されていない」というポテンシャルに可能性を感じたんです。当時、買い手がなく取り壊される寸前だった古民家を社長が自ら買い取り、「まずはここを一棟貸しの宿にしよう」と始まったのが「日本色」の原点です。そこから徐々に投資を行い、温泉や商業施設、飲食店などを立てていき、今の形になりました。

世代を問わず、誰もが自由に過ごせる「分散型の一棟貸し」

ーー「日本色」のコンセプトや特徴を教えてください。

小山田さん: 今でこそ分散型の宿泊施設は増えましたが、当時はまだ全国的にも珍しいものでした。一棟貸しというスタイルは非常に自由度が高く、カップルから2世代・3世代の大家族まで、同じ空間で一緒に泊まることができます。層を問わず、誰もが自分たちのスタイルに合わせて自由に使っていただけるのが大きな特徴ですね。

ーー現在は何棟あるのでしょうか。

小山田さん: 全部で10棟あります。最初は「千草(ちぐさ)」を含む3棟からスタートしましたが、「もう取り壊すしかない」「売り手が見つからない」といった建物を順次買い取り、リノベーションをしてきました。中には一部新築もありますが、基本的には既存の建物を生かしています。

囲炉裏での特別な夕食と、地元のお母さんが作るあたたかい朝食

ーーお食事についても教えていただけますか。夕食はどのようなスタイルなのでしょうか。

小山田さん: 夕食は、お部屋の囲炉裏(または七輪)を使ってお客様ご自身で食材を焼いていただくスタイルです。古民家ならではの非日常を味わっていただきたくて採用しました。食材は、お肉や近くの漁港でとれた干物、そしてお野菜など。基本的にはすべて用宗エリアのお肉屋さん、干物屋さん、八百屋さんから仕入れたものをご提供しています。

ーー朝食は「お母さんの作る朝食」とのことですが、どのようなものですか。

小山田さん: 地元の「お母さん」たちが手作りした朝食を、お客様のお部屋までお持ちして配膳しています。なかなか普通の宿では、地元の方と直接交流する機会は少ないと思うのですが、ここではお母さんたちと「昨日はどこへ行ったんですか?」「今日はどこへ行くの?」といったコミュニケーションが生まれます。用宗を知り尽くした地元の方との温かいふれあいも、特別な体験の一つとして楽しんでいただければと思っています。

季節の移ろいを感じる「日本色」という名前の由来

ーー「日本色」という名前には、どのような由来があるのでしょうか。

小山田さん: 日本には昔から、季節の微妙な変化を色に例える美しい伝統があります。この用宗にも、海や漁港、古い街並みがあり、そこに人々の暮らしが息づいています。昔の人が「秋の空の色」「夏の空の色」とさまざまな色を見出したように、訪れる方それぞれが感じるままの“色”を見つけてほしいという思いで「日本色」と名付けました。自然や四季の移り変わり、その微妙な違いをゆっくりと楽しんでいただきたいですね。

ーーお部屋の空間も、古民家の良さが生かされていて素敵ですね。

小山田さん: ありがとうございます。元からあった梁(はり)をそのまま使ったり、使えなかった柱もオブジェとして再利用したりと、当時の建具などを踏襲して生かしています。「青藍(せいらん)」というお部屋はペット同伴可能で、お庭を広めに取っています。ペットがのびのびと駆け回ったり、BBQを楽しんだりと、広々とした空間でゆったりと過ごしていただけます。

地域全体で用宗の魅力を発信していく

ーーおすすめの用宗での過ごし方はありますか?

小山田さん: やはり、ゆっくりと過ごしていただくのが一番です。マップなどを見ずに、ただ街中を散策するだけでもとても面白いですよ。「なんでこんな建物があるんだろう」という発見があったり、路地に猫がいたりして、まるで日本のアニメのワンシーンのような風景が至る所に転がっています。また、宿から駅や温泉までの送迎にはトゥクトゥクをご用意していますので、そちらもぜひ楽しんでいただきたいです。

ーー地域の方との関わりで大切にしていることは何ですか。

小山田さん: 街を動かすためには、一社だけでは何もできません。地域の住民の方々の理解や、他の事業者さん、そして行政との連携が不可欠です。最初は変化に対する反対意見もありましたが、実績を作りながら関係性を築いてきました。今ではトゥクトゥクが走っていても「あ、またあいつらか」と温かく見守っていただいています(笑)。日々の挨拶をしっかりすることや、地元の食材を積極的に使うなど、地域の人たちと愚直に向き合い続けることが一番大切だと思っています。

昔ながらの港町の風景の中に溶け込むように佇む「日本色」。そこには、古民家の息吹を感じながら非日常を味わえる空間と、地元の人々の温もりに触れる体験が待っていました。

「層を問わず、どんなお客様にも使いやすい宿でありたい」と語る小山田さん。用宗という街全体を巻き込み、地域と共に歩み続けるその姿からは、ここを訪れる人々にかけがえのない時間を届けたいという強い想いが伝わってきました。

日常から少し離れて、自分だけの“色”を見つける旅へ。ぜひ用宗の「日本色」を訪れてみてはいかがでしょうか。

日本色 NIHON IRO

日本色 NIHON IRO

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